AXA Switzerland:詐欺検知AIで1,200万ユーロ超の損失防止と顧客満足度向上を両立
- Ryosuke Murai
- Feb 3
- 3 min read
Updated: Feb 20
スイス最大の損害保険会社AXA Switzerlandは、Shift TechnologyのAIソリューション導入により、保険金請求処理の効率化と詐欺検知精度の飛躍的向上を実現。100万件以上のクレーム分析を通じ、1,200万ユーロ超の詐欺防止に成功した。この改革が同社の市場首位維持にどのように貢献したのか、その具体的手法と中小企業への応用可能性を探る。

AXA Switzerlandと?
200万を超える個人顧客と国内企業保険加入企業の40%以上を抱えるAXA Switzerlandが直面していたのは「スピードと安全性のジレンマ」。迅速な保険金支払いが顧客満足度向上に直結する一方、処理の迅速化が詐欺リスクを増大させるという課題を抱えていた。また、クレーム処理のために優秀な専門家が割かれており、その人材リソースが効率的に活用されていないことも課題となっていた。
迅速な対応と詐欺防止の両立
わずかな遅延も顧客満足度に影響を与えるため、初動段階で詐欺リスクを正確に見極め、正当なクレームは即座に処理、不審なクレームは専門家に回す仕組みが求められていた
限られた人材リソースの非効率な活用
正確なクレーム処理には専門人材が必要だが、現在はその人材が十分に活用されず、効率的な詐欺検知が課題となっている
これらの課題解決のため、AXA SwitzerlandはShift TechnologyのAIソリューションに注目。Shift Claims Fraud Detectionの導入により、クレームの初動時点からリアルタイムで詐欺検知を行い、正当なクレームは迅速に処理、不審なクレームは即座に専門家に振り分ける仕組みを実現した。
100万件以上のクレームを分析
Shift Technologyのシステムにより、AXAはこれまでに100万件以上の保険金請求データを精密に分析。迅速かつ高精度なリスク評価が実現している
1,200万ユーロ超の詐欺防止に成功
導入以降、ShiftのAIモデルが1,200万ユーロ以上の詐欺を未然に防止。これにより、本来の顧客サービス向上に注力できる体制が整った
リアルタイム詐欺検知 クレームが報告された瞬間(FNOL)に、数秒以内で詐欺の疑いを検出する。自動車保険や不動産保険にも対応し、スイス市場およびAXAのポートフォリオに合わせた100以上の詐欺シナリオを備えている
統合データによる精度向上 AXAの内部データ(ポリシー情報、クレームデータ)と政府記録、業界団体のデータなど外部情報を統合することで、より広範で正確な詐欺検知を実現している
詳細なアラート情報の提供 AIが各クレームの具体的なリスク要因や詐欺兆候を即座に提供することで、調査チームはすぐに対応を開始でき、迅速かつ的確な対応体制が整えた
「部分最適」から始める
全プロセスAI化を目指す前に、最もロスが大きい工程(例:書類審査/初期査定)に限定導入。AXAの場合、まず自動車保険のFNOL処理から着手
人的判断とAIの役割分担を設計
AIを「支援ツール」ではなく「意思決定プロセスの一部」として位置付け。AXAではリスクスコア80点以上のみ専門家へ回すルールを設定
外部知見を積極活用
自社データ不足を補うため、業界団体や政府機関のオープンデータを活用。Shift Technologyのようなドメイン知識豊富なベンダー選定が鍵
AXA Switzerlandの事例が示すのは、AI導入の本質が「技術そのもの」ではなく「ビジネスプロセスの再設計」にあるという点だ。同社は単に詐欺検知システムを入れたのではなく、「顧客満足度向上」と「経営リスク軽減」という相反する目標を、AIを媒介して統合的に最適化した。
日本の中堅・中小企業が学ぶべきは、AI導入をITプロジェクトではなく「経営改革プロセス」として捉える視点だ。Quest AIが提供する実践ケーススタディーを参考に、自社の強みを生かしたAI活用シナリオを描いてみてはいかがだろうか。
【補足:Shift Technologyの特徴】
保険業界特化型AIソリューションという強みを活かし、業界固有の規制や業務フローに即したシステム設計が可能。導入企業の85%が6ヶ月以内にROIを達成する実績を持つ。
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